コラム2026年5月14日

認証と承認の違い|登録認証機関(RCB)とPMDAの違い

認証と承認の違い:登録認証機関(RCB)とPMDAの違い

医療機器の薬事申請では、製品の特性に応じて「登録認証機関(RCB)による第三者認証」と「厚生労働大臣承認(PMDA審査)」の2つのルートが存在します。両者は申請先、必要書類、審査期間、手数料、運用が異なるため、自社製品にどちらが適用されるかを正確に判定することが、薬事戦略の起点となります。本記事では、認証と承認の制度的違い、登録認証機関とPMDAの違い、認証ルートの実務的な論点を、公式資料に基づき整理します。

目次

  1. 医療機器の3つの市販前手続き
  2. 認証(第三者認証)とは
  3. 承認とは
  4. 認証と承認の主な違い
  5. 認証基準の有無による分岐
  6. 認証非対象となるケース
  7. 登録認証機関(RCB)の選定
  8. 認証ルートのメリットと留意点
  9. PMDA承認ルートのメリットと留意点
  10. 認証ルート判定の進め方
  11. まとめ
  12. 参考リンク

1. 医療機器の3つの市販前手続き

日本の医療機器の市販前手続きは、リスククラスに応じて3つのルートに分かれます。

ルート対象申請先
製造販売届出クラスI(一般医療機器)PMDA(届出のみ)
第三者認証クラスII(管理医療機器)・一部クラスIII(高度管理医療機器)のうち認証基準があり、適用範囲に入るもの登録認証機関(RCB)
承認クラスII〜IVのうち認証ルート対象外のもの厚生労働大臣(PMDA審査)

この記事では、第三者認証と承認の違い、両者の違いを中心に解説します。

PMDAの「第三者認証の医療機器」では、認証制度について以下のように説明されています。

厚生労働大臣が基準を定めて指定する医療機器(指定高度管理医療機器及び指定管理医療機器)又は体外診断用医薬品を製造販売する場合には、品目ごとに厚生労働大臣の登録を受けた者(第三者認証機関)の認証を受ける必要があります。

つまり、認証ルートは「認証基準に適合する範囲で動く」ルートです。認証基準が存在しない、または適用範囲外の場合は、PMDAによる承認が必要となります。


2. 認証(第三者認証)とは

制度の概要

第三者認証は、厚生労働大臣の登録を受けた登録認証機関(RCB:Registered Certification Body)が、認証基準への適合性を確認して認証を与える制度です。RCBは民間の認証機関であり、現在国内では十数機関が登録されています。

適用対象

認証ルートの適用対象は以下のとおりです。

  • 指定管理医療機器(クラスII):認証基準が定められた管理医療機器
  • 指定高度管理医療機器(クラスIII):2014年11月25日以降、認証基準が定められた一部の高度管理医療機器

なお、認証基準は厚生労働大臣告示で個別に定められており、対象品目は段階的に拡大されてきました。

認証取得の流れ

認証取得の基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 一般的名称(JMDN)とクラス分類を確認
  2. 認証基準の有無と適用範囲を確認
  3. 登録認証機関(RCB)を選定
  4. 認証申請書類の準備
  5. RCBへの認証申請+QMS適合性調査申請
  6. RCBによる審査・QMS監査
  7. 認証取得

認証申請と並行して、RCBが製造販売業者および製造所のQMS適合性調査も実施します。両者が適合と判定されない限り、認証は取得できません。


3. 承認とは

制度の概要

承認は、PMDAが審査を行い、その結果に基づき厚生労働大臣が承認を与える制度です。PMDAの「承認について(承認)」で詳細が説明されています。

適用対象

承認の対象となるのは、以下のような医療機器です。

  • クラスIV(高度管理医療機器の最高リスク区分):すべて
  • クラスIII(高度管理医療機器):認証基準がない、または適用範囲外のもの
  • クラスII(管理医療機器):認証基準がない、または適用範囲外のもの

承認取得の流れ

承認取得の基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 一般的名称(JMDN)とクラス分類を確認
  2. 認証ルートの可否を判定
  3. 申請区分(新医療機器・改良医療機器・後発医療機器)を判定
  4. PMDA対面助言の活用
  5. 承認申請書類の準備
  6. PMDAへの承認申請+QMS適合性調査申請
  7. 審査・照会事項対応・QMS適合性調査
  8. 厚生労働大臣による承認

新医療機器の場合は、薬事審議会の部会審議を経て承認される流れになります。


4. 認証と承認の主な違い

両ルートを実務的に比較すると、以下のような違いがあります。

項目第三者認証承認
審査機関登録認証機関(RCB)PMDA
認証/承認主体RCB厚生労働大臣
対象認証基準に適合する指定管理・一部指定高度管理医療機器認証ルート対象外のクラスII〜IV
審査の基本認証基準への適合性確認個別の有効性・安全性・品質評価
審査期間比較的短い傾向申請区分により数か月〜1年以上
手数料RCBごとに異なるPMDA手数料表に基づく
申請区分の概念認証基準への適合性のみ新医療機器・改良医療機器・後発医療機器の3区分
対面助言RCBによる事前相談PMDA対面助言制度
QMS適合性調査RCBが実施PMDAが実施(認証基準対象外のクラスII〜IV)

認証ルートの実務的特徴

  • 認証基準という客観的な物差しがあるため、適合性判定がある程度予測可能
  • 民間のRCBが対応するため、サービス内容や柔軟性に違いが出ることがある
  • PMDA承認に比べ、審査期間が短い傾向にある

承認ルートの実務的特徴

  • 製品の個別性を踏まえた評価が行われる
  • 新規性が高い製品にも対応可能
  • PMDAの対面助言制度を通じて、開発初期から戦略的に進められる
  • 申請区分・臨床評価方針など、戦略判断の選択肢が多い

5. 認証基準の有無による分岐

認証ルートを選択できるかは、以下の2つの条件で決まります。

条件1:認証基準が存在すること

一般的名称(JMDN)ごとに認証基準が定められているかを確認します。認証基準は厚生労働大臣告示で個別に指定されており、品目は段階的に追加されています。

条件2:自社製品が認証基準の適用範囲に入ること

認証基準が存在しても、自社製品が以下の点で基準の適用範囲に入る必要があります。

  • 適用範囲(対象医療機器の定義)
  • 技術的基準(性能・安全性等の規格)
  • 使用目的または効果

これらが認証基準の範囲から外れる場合、認証は取得できません。

認証基準の確認方法

自社製品が認証ルートで進められるかは、以下のプロセスで確認します。

  1. PMDA医療機器一般的名称データベースで一般的名称を検索
  2. 一般的名称に紐づく認証基準の有無を確認
  3. 認証基準が定められている場合、その全文を入手
  4. 自社製品の仕様が認証基準の適用範囲・技術的基準に適合するか検証
  5. 適合性に疑義がある場合、RCBに事前相談

6. 認証非対象となるケース

認証基準が存在しても、以下のような場合は認証ルートで進められず、PMDA承認が必要になることがあります。

「明らかに異なる」場合

PMDAの「第三者認証の医療機器」では、以下の趣旨で記載されています。

医療機器の形状、構造、原理、使用方法及び操作方法若しくは性能等が既存の医療機器と明らかに異なる場合は、認証基準は適用されません(認証非対象)。

つまり、認証基準は「既存品の延長線上にある医療機器」を対象としており、革新的な新規医療機器は認証対象外となります。

使用目的または効果が認証基準の範囲外

認証基準には、対象とする使用目的または効果が明示されています。自社製品の使用目的がこれを超える場合(適応疾患の拡大、対象部位の拡大、新規の臨床用途等)、認証基準は適用されません。

構造・原材料が認証基準の範囲外

認証基準には、対象とする構造や原材料の範囲が指定されている場合があります。新規材料を使用する製品、認証基準で想定されていない構造を持つ製品は、認証対象外となる可能性があります。

性能が認証基準の規格を満たさない

認証基準では、性能・安全性に関する具体的な規格(JIS規格、IEC規格等)が指定されています。これらの規格を満たさない場合は、認証対象外となります。

認証/承認の境界線が微妙なケース

実務上、認証/承認の境界線が微妙なケースでは、以下の選択肢があります。

  • 認証基準を満たすよう製品仕様を調整して認証ルートを目指す
  • 認証基準の適用範囲外として、最初からPMDA承認を目指す
  • RCBに事前相談し、認証ルートの可否を確認する
  • PMDA医療機器全般相談で承認の可能性を確認する

7. 登録認証機関(RCB)の選定

認証ルートを採用する場合、申請者は厚生労働省公表の登録認証機関一覧から、認証機関を自由に選定できます。

RCBごとの違い

各RCBは以下の点で違いがあります。

  • 認証可能な領域:RCBごとに認証可能な一般的名称の範囲が異なる
  • 海外製造所への対応:海外QMS監査の経験・対応言語
  • 審査期間:RCBごとの運用体制で前後する
  • 手数料:認証申請料、QMS適合性調査料
  • コミュニケーション:技術的な相談対応の柔軟性

選定基準

実務的なRCB選定の基準としては、以下が挙げられます。

  • 自社製品の一般的名称を扱える実績があるか
  • 過去に類似品の認証実績があるか
  • 海外製造所への対応経験(海外メーカーの場合)
  • 認証スケジュールと自社の上市計画の整合
  • 手数料水準と支払条件
  • 担当者とのコミュニケーション

複数のRCBから見積もりを取得し、上記基準で比較検討するのが一般的です。

RCBとPMDAの関係

PMDAは、登録認証機関の登録・登録更新を行う立場にあります。また、PMDA「登録認証機関に対する調査等業務」によれば、RCBは認証基準やQMS調査の通知の解釈で判断に迷う場合、PMDAに相談することができます。相談内容と回答は品目を特定せずに全RCBに共有される仕組みになっており、判断の一貫性が確保される運用がなされています。


8. 認証ルートのメリットと留意点

メリット

1. 審査期間が比較的短い傾向 認証基準への適合性確認が中心となるため、PMDA承認(特に新医療機器・改良医療機器(臨床あり))と比較して、審査期間が短い傾向にあります。

2. 申請プロセスが定型化されやすい 認証基準という客観的な物差しがあるため、必要資料・評価項目が事前に明確になります。

3. RCBの柔軟な対応 民間機関であるRCBは、技術的な相談や進捗確認において柔軟な対応を期待できる場合があります。

4. 認証取得後の変更管理 認証取得後の軽微変更等についても、RCBに対する手続きで進められます。

留意点

1. 認証基準の適用範囲を超えた途端、認証不可 製品仕様の変更や適応拡大により、認証基準の適用範囲を外れると、PMDA承認への切り替えが必要になります。

2. RCBごとの対応差 同じ認証基準でも、RCBによって解釈や運用に微妙な違いが生じることがあります。

3. 海外製造所の対応 RCBが海外製造所のQMS監査を実施するため、RCBの海外対応経験が重要です。

4. 認証取得後の制度的変動 認証基準は厚生労働大臣告示で改定されることがあります。基準改定時の経過措置や対応が必要となる場合があります。


9. PMDA承認ルートのメリットと留意点

メリット

1. 新規性の高い製品にも対応 認証ルートでは対象外となる革新的医療機器、新規作用機序を持つ製品も、承認ルートで申請可能です。

2. PMDA対面助言制度の活用 開発前相談、申請前相談、プロトコル相談など、開発フェーズに応じた相談制度を活用できます。新規性の高い製品では、PMDAとの早期対話が承認取得の予測可能性を高めます。

3. 認証基準にとらわれない柔軟性 製品仕様、適応、使用方法、構造、原材料を自社の戦略に応じて設計でき、認証基準の制約を受けません。

4. 国際的な権威性 厚生労働大臣による承認は、海外規制当局や医療機関からも一定の権威性をもって受け入れられる傾向があります。

留意点

1. 審査期間と手数料 PMDA承認は申請区分により審査期間が異なり、新医療機器では1年程度を要することがあります。手数料も認証より高額になりやすい傾向にあります。

2. 申請区分判定の重要性 新医療機器・改良医療機器・後発医療機器のいずれに該当するかで、必要資料・審査期間・手数料が大きく変動します。区分判定を誤ると、申請受理後の手戻りが発生する可能性があります。

3. 臨床評価の要否 改良医療機器(臨床あり)や新医療機器では、臨床評価データの整備が必要となる場合があります。

4. QMS適合性調査 PMDAが実施するQMS適合性調査では、海外製造所の場合は実地調査の調整が長期化することがあります。


10. 認証ルート判定の進め方

実務上、認証/承認の判定は以下のステップで進めるのが効率的です。

ステップ1:一般的名称(JMDN)とクラス分類の特定

PMDA医療機器一般的名称データベースで、自社製品に該当する一般的名称を特定します。一般的名称にはクラス分類が紐付いています。

ステップ2:認証基準の有無の確認

該当する一般的名称に認証基準が定められているかを確認します。認証基準が存在しない場合、認証ルートは利用できず、PMDA承認となります。

ステップ3:認証基準の適用範囲の確認

認証基準が存在する場合、その全文を入手し、自社製品が以下の各観点で適用範囲に入るかを検証します。

  • 適用範囲(対象医療機器の定義)
  • 使用目的または効果
  • 構造・原材料・性能
  • 技術的基準への適合可能性

ステップ4:類似既認証品・既承認品の確認

PMDA医療機器承認品目一覧で、類似品が認証で取得されているか、承認で取得されているかを確認します。類似品の取得実績は、自社製品のルート判定の参考になります。

ステップ5:RCBへの事前相談またはPMDA医療機器全般相談

認証/承認の境界線が微妙な場合、以下のいずれかを活用します。

  • 候補となるRCBに事前相談し、認証ルートの可否について見解を確認
  • PMDA医療機器全般相談で承認ルートの可否について見解を確認

ステップ6:戦略的判断

両ルートが理論的に可能な場合や、製品仕様の調整次第でルートが変わる場合は、以下の観点から戦略的に判断します。

  • 上市スケジュール
  • 開発コスト・申請コスト
  • 製品の差別化要素
  • 認証基準への適合可否
  • 将来の製品ライン展開
  • 海外展開との整合

申請ルートの判定は、医療機器開発における最初の戦略判断であり、その後の薬事プロセス全体に影響します。早期に正確な見立てを行うことが、上市までの時間とコストを最適化する鍵になります。


11. まとめ

認証と承認の違いで押さえるべきポイントは以下のとおりです。

  1. 3つの市販前手続き:届出(クラスI)、第三者認証(認証基準あり)、承認(認証ルート対象外)。
  2. 認証基準の有無と適用範囲:認証基準が存在し、かつ自社製品が適用範囲に入る場合のみ認証ルートを選択可能。
  3. 「明らかに異なる」場合は認証非対象:既存品と構造・使用方法・性能等が明らかに異なる場合、認証基準は適用されない。
  4. RCBごとの違い:認証可能領域、海外対応、審査期間、手数料、コミュニケーションでRCB間に違いがある。
  5. 認証ルートのメリットと留意点:審査期間が短い傾向にある一方、適用範囲を外れたらPMDA承認への切り替えが必要。
  6. 承認ルートのメリットと留意点:新規性の高い製品に対応できる一方、審査期間・手数料・申請区分判定の重要性が高い。
  7. 早期の判定が戦略の起点:JMDN→認証基準→適用範囲→RCB相談/PMDA相談という順序で判定を進める。

申請ルートの判定は、薬事戦略の最初の重要な分岐点です。認証で進められる製品を最初からPMDA承認に振ると不要なコスト・時間を要し、逆に承認が必要な製品を認証で進めようとすると、申請受理後の手戻りが発生します。開発初期段階で正確な判定を行うことが、薬事戦略全体の効率を支えます。


12. 参考リンク


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