日本の医療機器市販後安全管理(PMS):承認後に必要な対応とは
医療機器の承認取得はゴールではなく、スタートです。承認後も、市販後安全管理(PMS:Post-Market Surveillance) として継続的な安全性監視・報告義務が課されます。これを怠ると、承認取り消しや行政処分のリスクがあります。
本記事では、日本の医療機器PMSの主要な義務と実務対応を解説します。
PMSとは
PMSとは、医療機器が市場に出た後も継続的に安全性・有効性を監視し、問題が発生した場合に適切な措置を講じるプロセスです。薬機法では、製造販売業者(MAH)に対して以下のPMS義務を課しています。
主要なPMS義務
1. 不具合・副作用報告
製造販売業者(MAH/DMAH)は、安全確保業務の責任者である「安全管理責任者」を配置し、以下の義務を遂行する必要があります。:
| 報告の種類 | 報告期限 |
|---|---|
| 死亡・重篤な傷害(既知) | 30日以内 |
| 死亡・重篤な傷害(未知) | 15日以内 |
| 感染症 | 15日以内 |
| 海外での措置(回収等) | 15日以内 |
実務ポイント:不具合情報の収集体制(苦情処理システム)を整備し、報告要否の判断基準を明確にしておくことが重要です。
2. 定期的安全性更新報告(PSUR)
一定期間ごとに、製品の安全性に関する情報を取りまとめてPMDAに報告します。報告頻度は製品のクラスや承認からの経過年数によって異なります。
3. 再審査
新規承認製品(特に革新的製品)については、承認後一定期間(通常4〜7年)の使用成績を収集し、再審査を受ける義務があります。
4. 再評価
既承認製品について、最新の科学的知見に基づいて安全性・有効性を再評価する制度です。
5. フィールドセーフティコレクティブアクション(FSCA)
製品の安全性に問題が発見された場合、自主回収(リコール)等の是正措置を実施し、PMDAに報告する義務があります。
PMSの実施体制
効果的なPMSを実施するためには、以下の体制整備が必要です:
苦情処理システム
- 医療機関・患者からの不具合情報を収集・記録するシステム
- 不具合の重篤度・報告要否を判断するプロセス
- 報告書の作成・提出プロセス
文献調査体制
- 自社製品・同等製品に関する文献を定期的に調査するプロセス
- 新たな安全性情報を評価・対応するプロセス
使用成績調査
再審査が必要な製品については、使用成績調査計画を策定し、医療機関と協力して調査を実施します。
海外メーカーのPMS対応
海外メーカーがDMAHを通じて日本市場に参入している場合、PMS対応はDMAHが主体となりますが、製造業者との緊密な連携が不可欠です:
- 不具合情報の共有:製造業者が海外で収集した不具合情報を、日本のDMAHにタイムリーに共有する体制
- FSCAの連携:海外での回収・是正措置が日本市場に影響する場合の連携プロセス
- 技術的サポート:PMDAからの技術的質問への対応における製造業者のサポート
よくある問題
不具合情報の収集漏れ:医療機関からの不具合情報が製造業者・DMAHに届かないケースがあります。情報収集ルートを明確にし、定期的に確認することが重要です。
報告期限の見落とし:特に海外での措置(回収等)が発生した場合、日本への報告期限(15日)を見落とすリスクがあります。
使用成績調査の遅延:再審査が必要な製品の使用成績調査が遅延すると、再審査申請が遅れ、最終的に承認が取り消されるリスクがあります。
MKコンサルティングのサポート
MKコンサルティングでは、PMS体制の構築支援から不具合報告の代行まで、市販後の安全管理をサポートします。海外メーカーとDMAHの連携体制づくりについても支援します。