2026年8月24日〜30日の世界の医療機器・MedTech業界では、AIを既存の医療機器に組み込む動きと、循環器・インターベンション領域の新製品や設備投資が目立ちました。
FDAではAbbottのグルコース・ケトン同時連続測定デバイスがDe Novo認可され、Tempusは通常の12誘導ECGから肺高血圧症の兆候を検出するAI医療機器について510(k)クリアランスを取得しました。
日本企業では、PENTAX MedicalがAI大腸内視鏡分野でMAGENTIQ EYEとの提携を世界規模に拡大。富士フイルムは内視鏡映像に3D画像・超音波情報を重畳する新システムを発売しています。
1. FDA、医療機器の認知規格リスト「Recognition List #66」を更新
公表日:2026年8月24日
FDAは、医療機器の市販前申請などで適合宣言に利用できるFDA Recognized Consensus Standardsを更新しました。
Recognition List #66では、新規規格の追加、既存規格の改訂・置換などが行われています。
510(k)、De Novo、PMAなど米国申請を行うメーカーにとっては、試験計画を立てる際に、FDAが現在認知している規格とそのバージョンを確認することが重要です。
公式情報: FDA:Federal Register Documents - Recognized Consensus Standards
2. FDA、グルコースとケトンを同時連続測定する世界初のウェアラブルをDe Novo認可
公表日:2026年8月25日
FDAはAbbottのLibre Duo 10 Day Continuous Dual Glucose Ketone Monitoring SystemをDe Novo経路で認可しました。
2歳以上の糖尿病患者を対象に、1個のウェアラブルセンサーでグルコースとケトンを1分ごとに連続測定します。
FDAによると、米国でケトンを連続測定する初のウェアラブルであり、グルコースとケトンの両方を継続的に測定する製品としては世界初です。
CGMが単なる血糖測定器から、複数のバイオマーカーを常時モニタリングするプラットフォームへ発展していることを示す製品として注目されます。
3. Tempus、12誘導ECGから肺高血圧症の兆候を検出するAI医療機器がFDAクリアランス
公表日:2026年8月24日
Tempus AIのECG-PHがFDA 510(k)クリアランスを取得しました。
通常の12誘導心電図データをAIで解析し、肺高血圧症に関連する兆候を検出するソフトウェアです。
Tempusにとって、心房細動や低駆出率を検出するAIに続く、3つ目のFDAクリア済み心血管AI製品となります。
新しい専用検査装置を導入するのではなく、既存のECGデータにAI解析を追加することで診断支援機能を拡張するアプローチであり、既存医療機器とSaMDを組み合わせた事業モデルとしても注目されます。
4. Abbott、次世代左心耳閉鎖デバイス「Amulet 360」がCEマーク取得
公表日:2026年8月27日
Abbottは、心房細動患者の脳卒中リスク低減を目的とする次世代左心耳閉鎖デバイスAmulet 360のCEマーク取得を発表しました。
従来のAmuletから設計が変更され、左心耳への適合性やシーリング性能の改善が図られています。
左心耳閉鎖市場ではBoston ScientificのWATCHMANシリーズなどとの競争が続いており、構造的心疾患領域における主要メーカーの製品競争がさらに進みそうです。
公式情報: Abbott:Next-generation Amulet 360 receives CE Mark
5. PENTAX Medical、AI大腸内視鏡のMAGENTIQ EYEとの提携を世界規模へ拡大
公表日:2026年8月26日
HOYAグループのPENTAX Medicalは、イスラエルのMAGENTIQ EYEとのAI内視鏡分野における提携拡大を発表しました。
米国を中心としていた協業を、EMEA、JAPAC、LATAMへ拡大します。
AI大腸内視鏡システム「MAGENTIQ-COLO」をPENTAX MedicalのINSPIRAやIMAGINAビデオプロセッサーと組み合わせ、リアルタイムでのポリープ検出などを支援します。
内視鏡メーカーが独立系AI企業と連携し、既存の内視鏡プラットフォームにAI機能を追加して世界展開するモデルであり、消化器内視鏡におけるAIの商用化が次の段階に入っていることを示す動きです。
公式情報: PENTAX Medical:Expanded Global Partnership with MAGENTIQ EYE
6. 富士フイルム、内視鏡映像に3D・超音波画像を重ねる「SYNAPSE VINCENT Eye」を発売
公表日:2026年8月27日
富士フイルムは、術場画像追従・重畳システム「SYNAPSE VINCENT Eye」を国内で発売しました。
術前CTやMRIから作成した3D画像を、内視鏡映像中の肝臓の向きに合わせて自動的に回転させる「連動ビューア」と、術中超音波画像を内視鏡映像上に重畳する「超音波フラッグAR」などを搭載します。
腹腔鏡手術やロボット支援手術において、術前画像、内視鏡画像、術中超音波を統合することで術者を支援します。
医療画像を単に表示するのではなく、リアルタイムの手術ナビゲーションに活用する方向へ画像診断技術が拡張している事例といえます。
公式情報: 富士フイルム:術場画像追従・重畳システム「SYNAPSE VINCENT Eye」
7. PhilipsとImricor、MRI内で心臓カテーテル治療を行う「Interventional MR Lab」を商用化
公表日:2026年8月27日
PhilipsとImricorは、1.5T MRI環境下で心臓インターベンションを行うInterventional MR Labの商用展開を発表しました。
PhilipsのMRIシステムと、ImricorのMR対応マッピングシステムやEPカテーテルなどを統合します。
これにより、心臓の解剖情報、カテーテルの位置、アブレーション後の組織変化などをMRI下で確認しながら治療を行うことを目指します。
現在の電気生理学的治療で一般的なX線透視とは異なるアプローチで、MRIを「診断装置」から治療ナビゲーションプラットフォームへ拡張する取り組みとして注目されます。
公式情報: Philips:Philips and Imricor launch cardiac Interventional MR Lab solution
8. Philips、遠隔脳卒中治療技術の開発で最大3,370万ドルの支援対象に
公表日:2026年8月26日
Philipsは米国のAdvanced Research Projects Agency for Health(ARPA-H)から、最大3,370万ドルの支援を受ける研究開発プロジェクトに選定されました。
Johns Hopkins University、Boston Universityなどと連携し、AIやロボティクスを活用した脳卒中の血管内治療技術を開発します。
将来的には専門医が常駐していない地域でも、遠隔支援や自動化技術によって高度な血管内治療へのアクセスを拡大することを目指しています。
画像下治療装置、ロボティクス、AI、スマートデバイスを一つのワークフローとして統合する構想で、医療ロボットの競争領域が遠隔・半自動インターベンションへ広がっていることを示しています。
公式情報: Philips:Philips selected for ARPA-H program to advance AI-enabled robotic stroke care
9. Kardium、PFAシステム増産へ1.25億カナダドル規模の設備投資
公表日:2026年8月27日
カナダのKardiumは、心房細動治療用Globe Pulsed Field Systemの生産能力拡大に向け、1.25億カナダドル規模の製造設備投資を実施します。
カナダ政府は、このプロジェクトに最大3,125万カナダドルを支援します。
政府発表によると、生産能力を年間約500台から3万台規模まで拡大する計画です。
PFA(Pulsed Field Ablation)はBoston Scientific、Medtronic、Johnson & Johnsonなど大手企業も注力している市場であり、Kardiumの大規模な生産能力増強は、今後のPFA市場拡大を見据えた動きと考えられます。
公式情報: Kardium:Funding to expand manufacturing of the Globe Pulsed Field System
10. Boston Scientific、サイバー攻撃で製造・受注・出荷システムに世界的な影響
発生:2026年8月25日/更新:8月29日
Boston Scientificは8月25日、一部のITシステムに対するサイバー攻撃を確認しました。
この影響により、製造、受注処理、製品出荷などに関係する一部システムで世界的な障害が発生しました。
8月29日時点では、クラウドベースのシステムへの影響は確認されておらず、影響は主に一部のオンプレミス環境に限定されているとしています。
医療機器業界におけるサイバーセキュリティは、製品そのものの安全性だけでなく、メーカーの製造・物流・供給継続性にも直接影響する経営リスクになっています。
公式情報: Boston Scientific:Update on Recent Cybersecurity Incident
まとめ
TempusのECG解析AIやPENTAX MedicalのAI内視鏡のように、既存の医療機器にAI機能を追加する動きが広がる一方、富士フイルムの「SYNAPSE VINCENT Eye」やPhilipsのInterventional MR Labなど、画像情報をリアルタイムの治療支援へ活用する技術も進展しています。
また、Abbottの次世代左心耳閉鎖デバイスやKardiumのPFA製造能力拡大など、循環器インターベンション領域では引き続き活発な投資と製品開発が続いています。
Boston Scientificのサイバー攻撃は、医療機器メーカーにとってサイバーセキュリティが製品開発上の問題だけではなく、製造・物流・安定供給を含む事業継続上の重要課題になっていることを改めて示しました。