2026年5月18日〜5月24日の医療機器業界では、慢性疼痛治療、TAVR、手術支援ロボット、大動脈弓部治療、リキッドバイオプシーなど、成長領域に関する投資・買収・製品アップデートが目立ちました。
本記事では、海外主要企業の動き、国内医療機器・ヘルスケア企業の決算、日本市場へ導入する際の薬事論点を整理します。
目次
1. 今週の注目ポイント
- Medtronicが、慢性疼痛向け末梢神経刺激(PNS)デバイスを開発するSPR Therapeuticsを約6億5,000万ドルで買収する意向を発表
- Boston Scientificが、TAVR開発企業MiRusに15億ドルを投資し、同社の心臓弁事業を買収するオプションを取得
- Intuitive Surgicalが、手術支援ロボット「da Vinci 5」向けに100件超のアップデートを準備
- Artivionが、大動脈弓部治療デバイス「NEXUS Aortic Arch System」を開発するEndospanの買収を完了
- Guardant Healthが、拡張版「Guardant360 Liquid CDx」についてFDA承認を取得
- 国内では、日本光電とコニカミノルタの2026年3月期決算に注目
2. 海外医療機器メーカーの主要ニュース
Medtronic、SPR Therapeuticsを約6億5,000万ドルで買収へ
Medtronicは、慢性疼痛治療向けの末梢神経刺激(PNS)技術を持つSPR Therapeuticsを、約6億5,000万ドルの現金対価で買収する意向を発表しました。
SPR Therapeuticsの「SPRINT PNS System」は、一時的なPNS治療を提供するデバイスであり、Medtronicにとってはニューロモデュレーション領域のポートフォリオ拡充につながる動きです。慢性疼痛領域では、薬物療法、植込み型刺激デバイス、低侵襲治療の選択肢が広がっており、非オピオイド治療への関心も高まっています。
Boston Scientific、TAVR開発企業MiRusに15億ドルを投資
Boston Scientificは、バルーン拡張型TAVRシステムを開発するMiRusに15億ドルを投資し、同社株式の34%を取得しました。さらに、一定条件のもとで心臓弁事業を追加取得できるオプションも確保しています。
Boston Scientificは過去にTAVR事業で苦戦した経緯がありますが、今回の投資は、成長市場である構造的心疾患領域への再強化を示すものです。TAVRは高齢化と低侵襲治療ニーズを背景に、引き続き競争の激しい領域です。
Intuitive Surgical、da Vinci 5の機能アップデートを準備
Intuitive Surgicalは、手術支援ロボット「da Vinci 5」に対し、100件を超えるアップデートおよびユーザー体験改善を準備していると報じられました。
アップデートには、遠隔地の医師とのコミュニケーションを支援する機能、トレーニングやシミュレーションの強化、フォースフィードバック関連機能の活用拡大などが含まれます。手術支援ロボット市場では、Johnson & Johnson、Medtronic、CMR Surgicalなどの競合も存在し、既存プラットフォームの継続的な改良が重要になっています。
Artivion、Endospan買収を完了
Artivionは、大動脈弓部疾患向けの「NEXUS Aortic Arch System」を開発するEndospanの買収を完了しました。NEXUSは、2026年4月にFDAのPMA(市販前承認)を取得した大動脈弓部治療向けの分岐型ステントグラフトシステムです。
大動脈弓部は解剖学的に複雑で、従来は外科手術の負担が大きい領域です。NEXUSのような血管内治療デバイスは、高リスク患者に対する低侵襲治療の選択肢として注目されます。
Guardant Health、Guardant360 Liquid CDxのFDA承認を取得
Guardant Healthは、血液ベースのがんゲノムプロファイリング検査「Guardant360 Liquid CDx」の新バージョンについてFDA承認を取得しました。同社によれば、新しい検査は従来版よりも広いゲノム領域を評価し、既存のコンパニオン診断適応も引き継ぐとされています。
リキッドバイオプシーは、腫瘍組織の採取が難しい患者や、治療方針決定に必要な遺伝子変異情報を迅速に確認したい場面で活用が進んでいます。一方で、日本導入時には、体外診断用医薬品または医療機器プログラム等としての該当性、コンパニオン診断としての位置づけ、保険償還の整理が重要になります。
3. 国内医療機器・ヘルスケア企業の決算動向
2026年3月期決算の概要
| 企業名 | 売上高 | 営業利益 | 親会社株主・所有者に帰属する当期純利益 |
|---|---|---|---|
| 日本光電工業(6849) | 2,350億99百万円(前期比+4.3%) | 187億45百万円(前期比-9.5%) | 145億13百万円(前期比+2.9%) |
| コニカミノルタ(4902) | 1兆877億38百万円(前期比-3.6%) | 498億69百万円 | 302億68百万円(黒字転換) |
日本光電工業
日本光電工業は、2026年3月期に売上高2,350億99百万円、営業利益187億45百万円、親会社株主に帰属する当期純利益145億13百万円を計上しました。商品群別では、生体計測機器が前期比14.4%増、治療機器が5.8%増となりました。一方、生体情報モニタは0.8%減でした。
2027年3月期は、売上高2,325億円、営業利益235億円を見込んでいます。増収基調を維持しつつ、費用増や地域別収益性をどのように改善するかが注目点です。
コニカミノルタ
コニカミノルタは、2026年3月期に売上高1兆877億38百万円、営業利益498億69百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益302億68百万円を計上しました。売上高は前期比で減少しましたが、構造改革や事業の選択と集中により、前期の赤字から黒字転換しました。
同社は医療機器専業ではありませんが、画像診断関連などヘルスケア領域を有しており、事業ポートフォリオの見直しと収益性改善の進捗が引き続き注目されます。
Sonova
補聴器大手のSonovaは、2025/26年度に現地通貨ベースで5.9%の売上成長を達成しました。2026/27年度については、現地通貨ベースで売上高5〜8%増、Core EBIT 7〜10%増を見込んでいます。
聴覚関連デバイスでは、AI、接続性、ソフトウェア機能の強化が進んでおり、従来のハードウェア販売に加えて、デジタル機能を含めた競争が強まっています。
4. 薬事・日本市場導入の観点
今週のニュースでは、米国・欧州を中心とした買収、FDA承認、製品アップデートが多く見られました。ただし、海外でFDA承認やCEマークを取得している医療機器であっても、日本で販売するには、日本の薬機法上の位置づけを個別に確認する必要があります。
特に、TAVR、手術支援ロボット、リキッドバイオプシー、神経刺激デバイスのような製品では、以下の論点が重要です。
- 日本における医療機器クラス分類、承認・認証・届出の区分
- 既承認品との同等性または差分の整理
- 海外臨床データを日本での申請に活用できるか
- 使用目的、適応、対象患者の設定
- 臨床評価報告書、臨床試験、レジストリデータ等の必要性
- ソフトウェア、サイバーセキュリティ、AI機能を含む場合の評価方針
- 保険償還上の位置づけ
- PMDA相談の要否
5. まとめ
2026年5月18日〜5月24日の医療機器業界では、MedtronicのSPR Therapeutics買収、Boston ScientificのMiRus投資、Intuitive Surgicalのda Vinci 5アップデート、ArtivionのEndospan買収、Guardant HealthのGuardant360 Liquid CDx承認など、成長領域における動きが相次ぎました。
市場面では、慢性疼痛、TAVR、手術支援ロボット、大動脈治療、リキッドバイオプシーといった領域で、低侵襲化、個別化医療、ソフトウェア機能の高度化が進んでいます。
一方、日本市場へ導入する場合には、海外承認の有無だけでなく、日本の薬機法上の分類、既承認品との差分、臨床評価、PMDA相談、保険償還を一体で検討する必要があります。海外で実績のある医療機器ほど、日本での申請に用いる資料を再構成し、国内の審査論点に合わせて説明することが重要です。
6. 出典・参考資料
本記事は、以下の公表資料・報道資料を参照して作成しています。
- Medtronic:Medtronic announces intent to acquire SPR Therapeutics, Inc.
- Reuters:Boston Scientific invests $1.5 billion in MiRus with option to buy heart-valve business
- MedTech Dive:Intuitive readies 100 updates and improvements for da Vinci 5
- Business Wire:Endospan Announces Closing of Acquisition by Artivion, Inc.
- Business Wire:FDA Approves New Guardant360 Liquid CDx
- 日本光電工業:2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
- コニカミノルタ:2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)
- Sonova:Sonova delivers strong FY 2025/26 results
- PMDA:医療機器の相談業務
MKコンサルティングのサポート
MKコンサルティング株式会社は、医療機器の薬機法対応、PMDA承認、登録認証機関による認証、臨床評価、保険収載に関する薬事コンサルティングを提供しています。
特に、消化器内視鏡処置具、胆膵領域デバイス、胆管・膵管ステント、カテーテル等の分野において、製品特性と臨床現場を踏まえた薬事戦略の設計を支援しています。
海外メーカーの日本市場参入においては、海外承認資料・臨床データ・技術文書を日本での申請に用いる形に再構成し、PMDA相談、承認・認証申請、選任製造販売業者(DMAH)候補企業との連携まで、実務に即した支援が可能です。